執事の雑感
「安心」をお届けします
掲載日 2018年3月19日

大きな自然の流れは人の前を、春夏秋冬、寒暖、晴曇、乾湿、風雨などとして通り過ぎていきます。

人類はアフリカのエチオピア辺りを起源として陸地を伝って拡がり、私たちモンゴロイドなどはアリューシャン列島をも渡り、南米大陸の最北端まで到ったようです。遥かな旅の中から次第に定住を覚えたのは、稲作など食料の安定供給の術が扉を開き、そのことによって村社会の形成による階層支配と隣村との合従連衡が生れ、解決不能な事柄には宗教という知恵も必要となりました。この天地の運行を見事に昇華させた社会の完成形として、江戸幕府の時世が長く続きました。

その盤石と思われた封建社会も、今から150年前に上から下まで「御維新」。そこで新たに生まれた「富国強兵」は対外戦争を続けた末に、信じた事柄一切を喪失して敗戦でおしまい。焼け野原からの経済一点張りとなり、「衣食足りて栄辱を知る」だからと、どうにかして格好をつけたいと思うのも致し方ないことではありますが、やはり「坂の上の雲」で、何かを掴んだと思った途端に何もなく泡と消え、砂上の楼閣となりました。島崎藤村は『夜明け前』で、大政奉還した徳川慶喜を「あだかも高く飛ぶことを知る鳥は、風を迎え翼を収めることを知っていて、自然と自分を持って行ってくれる風の力に身を任せようとするかのように」と評しました。事実、西郷隆盛や大久保利通には叶わなかった天寿をまっとうしています。

平成の30年から明年は改暦となります。その30年と私の社会生活はピタリと重なります。人には持って生まれた性分があり、つらつらとこの国や人々や身近な一族のことなども振り返りますが、それは私一人の性分の責任(せい)にするのではなく、必然とも思えるご縁によって紡がれてきたのではないかと理解したいからです。

私自身は八王子市川口での里山保全活動に多くの方々が参加していただけるように、その仕組みとして、東京では初の『樹木葬墓苑』をつくり、同時にお寺をハブにした地域に住む方々の共助を促すことを目標にNPO法人を立ち上げました。八王子では環境保全、多摩産木材の利用・作品の販売、稲刈りやお餅搗きなど小学生への環境学習のお手伝いをし、新宿では「寺市」「シネマ」「ヨガ」「カフェ」「成子塾」そして「フリーペーパー」といったような意識を持った人々が集う機会を設けてきました。これらを行ってきた使命の根幹には、より困っている方々のための具体的なセーフティーネットの構築という目的があり、八王子では身寄りのない方や、生活に困窮しているなど様々な事情の方の遺骨を無料で引き受け、お墓に納骨し供養をしています。

夜空を眺めていると星々が動いていることに気付きます。それは自らが立つ地球が動いていることによって、そのように感じるに過ぎません。常住不壊と思いがちですが、仏教は「諸行無常」を示し、誰もが死を迎えると説きました。その必定を受入れてこられたのは、生活が自然の営みに基づき、先祖からの土地や生業があったからです。現代では多くを失いました。時間の針を戻すことはできませんが、今春からはさらに、お金だけでは解決できないコトやモノを、寺だから出来ることとして新宿に全く新しいお墓を作り、そして「死者から生者を見つめる」回向を原点とし、今まではご縁がなかった方々への「安心」をお届けしてまいります。

『LO+ VOL.13』を発行しました。よろしければお知り合いの方々にもお配りください。ご請求いただければ何冊でもお届けいたします。活動にご協力ください。(NPO法人ロータスプロジェクト フリーペーパー『LO+(2018/4/1)』より転載)

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